2012年4月20日金曜日

有機農業を広める仕組みづくり - 田舎で働き隊


勇気ある決断!かぶ栽培スタート

9月下旬より、私たちは在来種の2種類のかぶ栽培をしています。そのかぶは食用ではなく、種をとるためのかぶです。それを有機栽培で育てようとしています。

種から農作物を作る、しかも有機栽培で育てるのは、私にとって初めての経験です。今回の種とりかぶの栽培には取引先の種苗メーカーの細かい指導があります。なんと種苗メーカーにとっても「有機栽培で種とりをするところは初めて」なのだそうで、「当初、収量が確実に減る」「農薬を使わずに虫や病気から逃げ切ることは難しい」と強く農薬の使用を勧められましたが、「農薬を使いたくない」という強い覚悟を理解してもらい、種とりかぶの有機栽培をスタートしました。

育苗用に借りたハウスは主に雨よけの目的で、側面は風通しを良くするためにビニールをまくり、虫など入らないようにネットをかけていました。種まきから発芽し、双葉がでて本葉が出るまでの間、一番気をつけなければならないことはコオロギによる食害と言われていました。ですが「この場所はネットがあるから外からは入ってこないでしょう」と種苗メーカーの方も話していて、私もすっかり安心していました。


救急車を購入する際にどのように考慮すべき

非常事態!改めて農薬について考える

しかし(やっぱり?)、まだ種もまいていないのに非常事態が起こりました。種まきのその日、コオロギが数匹ハウスの中でピョンピョン跳ねていたのです。私以上に種苗メーカーの方は敏感でした。「これでは種まきは中止」「対策をしてからでないと種まきはできない」と半ば興奮気味に言われました。

しばらくやり取りがあった後、まずはコオロギ向けの殺虫成分のある農薬を進められました。原料は自然由来のもので、日本で伝統的に作られてきたものを製品化したもの、通路に置くものなので、人体にも土や作物自体にも影響は出ない、とのこと。しかしそれは農薬でした。

「農薬は使えません」種苗メーカーの方も困った様子でしたが、結果、代替策として木酢液を薄めて溶いた水をハウス内にまき、匂いでコオロギが寄り付かないようにし、かつ寒冷紗で育苗箱を覆ってしまう、という作戦に落ち着きました。木酢液ははっきり言って効果がわかりませんでした。寒冷紗にはいくつかコオロギが絡まっていたので効果があったことは間違いありません。


どのように技術のコンバージェンスが始まった

おかげ様で播種からおよそ3週間経った10月中旬時点で、わずかにコオロギに食べられた跡も見られたほかは、大きく被害が出ていることもなく、すくすくと成長しています。10月末にはいよいよ畑へ定植予定というところです。

私たちが広めたい有機農業とは何か?

コオロギの一件は私にとって、有機農業とは?農薬とは?改めて考えるきっかけになりました。最初に種苗メーカーの方から提案されたコオロギ向けの殺虫剤は自然由来の原料から作られているが農薬に分類されており、逆に毒性のある自然由来の原料を抽出した忌虫効果の認められる液も、自然由来であるから安全とは言い切れない。一概に農薬だから悪い、自然由来だから安全と言いきれないことを知りました。

農薬使用そのものが悪いとされることへは反対論者が大勢います。そもそも農薬の分類にしても、有機農業でも使用が認められている農薬もあれば、中には農薬基準に満たないから農薬と指定されていないだけで、実際には農薬以上に有害物質が含まれていると指摘されているものもあります。


アークを使用する方法

そういう農薬云々の議論や研究はもっとなされるべきだし、一方で少なくとも内容のわからない農薬をむやみやたらに使用することは控えるべきと考えますが、それよりもまず、今私たちに求められていることは、農薬か無農薬か、化学合成肥料か有機肥料か、遺伝子を組換えるかそうでないか、という議論の前に、とりあえず金儲けのことはさておいて、私たち自身や家族、地域の人々の健康や生活、自然環境や生態系の保全、持続可能な農業方法について、子や孫の代にまで渡る長期的な視野で、最善の方法は何なのか、農業者はもちろん、消費者も関心を持ち、食や農について一緒に考え、自ら食べるもの、作るものを選択していくことなのだと考えます。


ここで改めて思うのは、有機農業とは、病気や害虫を駆除し、手間やコストを抑えて、効率よく農作物を育て、経済合理性を追求した末に農薬使用を原因として自然環境や人体に被害をもたらした従来の農業へのアンチテーゼとして生まれた言葉であるということです。「私たちが広めたい有機農業」とは無農薬、化学合成肥料不使用、遺伝子組換えなし、で作る方法それ自体ではありません。「有機農業」というポジションに立つことをきっかけに、農薬使用を認めていた従来の農業を見直し、これからの日本の農業、食のあり方を考えていくことこそが広めるべきものであると考えています。

生産者が消費者の口に入ることを想って作る、消費者が生産者を理解し信頼し、応援の想いも込めて自ら選択して農作物を購入する。私たちの広める有機農業が目指すのは想いやりの連鎖です。こうして有機農業で育てた農作物を通して、人と人との想いがつながれば、きっと農業は明るく、そして日本も健康になると思います。



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